床屋のご主人

ここに通うようになったのは中学生の頃だっただろうか?

私の実家から歩いて行ける距離にある床屋さんのことだ

結婚してから住む場所が自宅より5kmほど遠くなっても

その後に一度引っ越しをしたので十数kmほど離れた場所なっても

以前と変わらず通い続けている

4週間~6週間程度に1回の周期で通っているのは昔のまま

昔と変わったのは通う手段が「自転車」から「車」になったこと

そして、ご主人も私も「歳」をとったことくらいだ

そんなご主人が先日こんなことをおっしゃった

「私はね、70歳になったら店をやめようと思ってる」

「あと一年くらい先だけどね」

お子さんは娘さんだけで床屋を継ぐ人はいなかったから

いつかはそんな日が来るのだろうと漠然と考えていたが

具体的にその時期が明確になってみると寂しいものだ

「そうですか、寂しいですけど仕方ありませんね」

「お仕事辞めたら、ゆっくりと旅行にでも行けますね」

私はそんな言葉で返した

「そうだね、どこにも行けなかったからね」

「ふたりとも身体が元気なうちにゆっくりできそうで良かったよ」

お店の手伝いをしている奥さんも楽しみにしているかも知れない

そう言いながらも本心では

あとを継ぐ人がいないのは寂しいだろう

??歳の自分にとっては

70歳まで働き続けることが想像できない

この世代の方たちの頑張る姿を忘れてはいけない

だらしなく生きている自分も頑張らなければ

そう思った瞬間だった